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ご主人様!下腹部がスースーします!その1




 ガシャーーーーン!

「キャァァァァッァァァァッ!!」

 けたたましい音と共につんざくような悲鳴が屋敷内に響き渡った。

それを聞きつけた当主、九条(くじょうまこと)は、

「............また華凛(かりん)か」

 溜め息と共に頭を抱え、テーブルに突っ伏した。




「申し訳ありませんでした......ご主人様......」

 目の前のシュンと肩を落とし、涙目になっているメイドに向かって問う。

華凛......君が我が家の家宝を壊すのはこれで何回目だ?」

 は当主の責務として、時価で言えば数千万の価値のある壷を粉々に粉砕した華凛を自室に呼びつけていた。

「......三回目で御座います」

「......嘘をつくな五回目だろう。数も満足に数えられないのか君は......」

「も、申し訳ありませんッ!」

 キツツキも真っ青のスピードで腰を折り曲げ、頭を下げる華凛

 そんな華凛を見ながら、は決して小さくはない溜め息をついた。

「君がこの屋敷に仕え始めて、どれくらい経つ?」

「一年と少しで御座います......」

「そうか......一年も経てば大抵のメイドは一人前になるものだがな。君は全然変わらないな?」

「そ、そんな事ありませんッ!髪だって伸びましたし、胸もちょっとはッ!」

「............見た目の話をしている訳ではない......メイドとしての技量を問うている」

 胸に両手を当てて鼻息荒くする華凛をたしなめるように言う。

「そんな君を未だにメイドとして雇っているのは何故だと思う?」

 華凛は首を傾げてしばし考え、

「私が可愛いからでしょうか?」

 臆面もなくそう言い放った。

 頭痛をこらえるかのように目頭を押さえる

 どれだけ腹が立っていても、華凛を相手にすると拍子抜けしてしまう。

「......そのふてぶてしさは嫌いではないが、淑女として”慎み”というものを覚えたまえ......君をクビにする事無く今なお雇っているのは、隠居した先代の言葉があるからだ。『よくよく華凛に目を掛けてあげるように』とね。その言葉が無かったらとっくに君は解雇にしている」

「そんなぁ〜」と落としていた肩を更に落とし、目元に涙を滲ませる。

 そんな華凛を見ていると、としてもあまり怒る事が出来なくなってしまうのだ。

 もともと、高価な物に興味のないは、たかが壷の一つや二つ壊れた所で別段腹が立つ訳でもない。

 とは言えしかしだ。

「一応、先代達が大切にしてきたものだからね。もう少し丁重に扱って貰わないと困る」

 なるだけ威厳を保てるよう低い声で注意した。

「ハイッ!生涯この身を家に捧げる事で、償っていくつもりです!」

「いや、丁重に扱ってくれと言ってるんだが......さては壊す気マンマンだなお前」

 そもそも華凛が生涯働いても賄える金額ではない。

 華凛が破壊した物品の総額はとうの昔に億を超えているのだから。

(なんか本当に頭が痛くなってきた......)

 華凛と話していると毎度毎度、論点がズレる、噛み合わない。

 普通に注意しただけではこの娘は何も堪えないのではないのかとすら思えてくる。

 華凛以下はいなくとも華凛以上に仕事が出来る子ならいくらでも見付かるだろう。

 先代の言葉があるとは言え、料理も掃除も世話係もまともに出来た試しがない。

 まともな方法で教育が出来ないのであれば、とは考える。

 そして、悪戯心と共にふと妙案が浮かんだ。

華凛

「何でしょうか、ご主人様?」

 子猫のように小首を傾げながら、栗色のロングヘアを揺らしながらそう聞き返す華凛

 目鼻立ちの整った年相応の可愛らしい子だ。

 スタイルは細身ながら、きちんと出るトコは出ており、女性らしい丸みを帯びている。

 器量だけなら申し分ないのだが、そのアホな性格のせいで色々と損をしている気がした。

 そんな華凛に、

「パンツを脱ぎたまえ」

 は出し抜けにそう言った。

「................?...............もう一回お願いします、ご主人様」

 クリクリとよく動くどんぐり眼が、の言った言葉の意味を本当に理解していない事を伺わせていた。

 はさっきと同じ調子で繰り返す。

「パンツを脱ぎたまえ」

「もう一回お願いします」

「パンツを脱ぎたまえ」

「もう一回お願いします」

「いや、聞こえてるだろ。パンツをさっさと脱げと言っている」

「な、な、なにゆえ私のパンツをご所望されるのですかッ!?」

「それはだな、君が......」

「もしやご主人様は婦人用ショーツを鼻にあててクンカクンカするご趣味がおありだったのですかッ!?」

「いや、違う。君がだな......」

「でも、でもでもっ!ご主人様が所望するのであれば......この身を九条家に捧げたメイドとして......パ、パンツぐらい......」

「人の話を聞けーい!!」

 自分の世界に入り始めた華凛を制するように真は声を張り上げた。

「いいかっ!?これまで君には何度となく注意してきたが、一向に改善の気配が無いッ!だからと言ってクビにする事も出来ない訳だ!」

 このジレンマが分かるか!?とばかりに声を大にする

 華凛はプルプル震えながら「うぅ......ごめんなさい」と俯いて唇を噛み締めている。

「であるなら常軌を逸したやり方で教育を施す必要がある!」

「......それとパンツと一体どういう関係が......」

 は「いいか?」と人差し指を立てながら、子供に言い聞かせるように話し始めた。

「俺が思うに、君には緊張感が足りないのだ」

「そんなッ!!私は毎日緊張で乳首が張り裂けそうなのにっ!」

「いやいや、この前中庭でアホ面下げて、涎垂らしながら寝てただろう。そして、張り裂けるのは乳首ではなく胸だ」

 とにかく!と咳払いを一つして、は続ける。

「普段から気を張っていないから、些細なミスを繰り返すんだ!だが、緊張感というものは一朝一夕で身に付くものではないッ!下着を身に着けていなければ、多少なりとも緊張感が生まれるだろう」

「でもでもでもッ!下着を着けていなかったら、色々漏れたりはみ出たりっ!!」

「漏れるは分かるが、はみ出るとは何がだっ!?——まぁ、いい。これは決定事項だ。メイド長にも、君の下着は全て没収するように伝えておく」

「ガガントス!!」

 頭を抱えながらその場に崩れ落ちる華凛

「......ががん、とす?」

 そんな華凛を首を傾げながら見ていたは、

「さっさと脱いで、こちらに寄越しなさい」

 右手を出しながらそう言った。

「うぅ......分かりました」

 よろよろと起き上がりながら、華凛は黒と白の可愛いフリルの付いたメイド服のスカートの中に、両手を入れた。



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