昂り過ぎた気持ちを抑えようと、熱いお湯を頭から被る。
しかし、頭の中を過るのは彼女の美しい肢体。
スラリと伸びたしなやかな脚、柔らかそうな太腿、女性らしい丸みを帯びたお尻、慎ましくもきちんと膨らんでいる胸、ショートが似合う整った顔立ち。
この手で強く抱き締めてみたい。
一体どんな抱き心地なのだろうか?
どんな感触なのだろうか?
感じている時、どんな声を出すのだろうか?
その時、見せる表情は?
どうしてもそんな事ばかり考えてしまうのだ。
そうして妄想しているだけで俺のドラ息子は既に臨戦態勢となっていた。
それこそ触ればすぐにでも爆発しそうな位パンパンに。
「しばらくご無沙汰だったからなぁ......」
男という生き物はエッチや自慰の間隔が空けば空く程、ペニスは敏感になりイキやすくなってしまう。
「すぐにイッちゃったりしたら恥ずいな......」
早漏であるというのは、何故か理由は分からないが、男として情けない気がする。
”何か”をした訳でもされた訳でもないのにムラムラのピークに達していた俺は、とりあえず一発抜いておく事にした。
一回でも抜いておけばいざ彼女とそうなった時、長持ちするに違いないと思ったからだ。
俺は硬く聳り立ったペニスの棹に手を伸ばし、彼女のバスタオルの奥に隠れた裸体を想像しながらシコシコとしごき始めた。
そう、まさしくシコシコという擬音がピッタリだ。
最初に考えた奴は天才だと思う。
先端からはトロトロと我慢汁が溢れ始め、俺の右手はあっという間に自分のおツユでベトベトになっていった。
湧き出る泉のように溢れてくるカウパーを潤滑油にしながら、右手のスピードを加速させていく。
自分の体の事なので射精に導く為のスピード、強弱、緩急などは手慣れたものだ。
心地良い快感が股間から脳髄に駆け抜け、
「ウッッ!」
小さく呻いて俺は吐精した。
先端から勢いよく飛び出した白濁液が狭いバスルームの床や壁に飛び散っていく。
軽い痺れを伴った快感に酔いしれる。
しかし、しばらく快感に浸った後、ドッと押し寄せてくるのは「一体俺は何をやっているんだ」という冷静な感情。
精液まみれになった手を水と石鹸で洗い流し、次いで床や壁に飛び散った精液の残滓もシャワーで洗い流していく。
男にとって自分の精液処理をしている時間程、空しくなる瞬間は無いだろう。
しかしこれで入れた瞬間に暴発するという事態は避けられる筈だ。
俺は手早く処理を済ませると、本来の体を洗うという目的に取りかかった。
入浴を終え、タオルで体を拭き清めている時にふと考える。
あれやこれやと邪な妄想を繰り広げていたが、もし俺が風呂に入っている間に寝入っていたら?
色々妄想しまくった挙げ句、結局手が出せないというのはラブコメアニメの王道パターンでもある。
というかそもそも美少女を家に泊めるという美味しい展開がこの世に存在するのだろうか?
もしかしたら金目の物だけ盗まれて、彼女はこのアパートから綺麗さっぱり姿を消しているかもしれないじゃないか。
(何故、そこに気付かなかった!?俺!!)
援助交際などでホテルのシャワーを浴びてる隙に財布からお金を抜き取られるなどよくある話だ。
何も考えず風呂に入った自分の迂闊さを呪う。
唐突に不安を覚えた俺はバスルームの扉から顔だけ出して彼女が居る筈の居間に視線を走らせた。
その視線の先に彼女は、
(えーと......)
——居る。
普通に居る。
そして間違いなく起きている。
何故起きていると断言出来るかというと、彼女は俺が風呂に入る前に見た位置から直立不動のまま一ミリも動いていなかったからだ。
足の甲に五寸釘でも打ち込まれたかのようにその場にボーッ突っ立っている。
そして視線は夢遊病患者みたいにただ一点をジッと見詰めている。
その姿を見た瞬間、「俺この部屋にマネキン置いてたっけ?」と勘違いしてしまう程の直立不動っぷりだった。
今誰かがこの部屋に入ったら、きっと彼女の事はオブジェかインテリアだと勘違いするだろう。
(つーかなにしてんの?......壁?........なんで壁見てんの???)
この部屋には絵画やら写真やら洒落た物は飾っておらず、まんじりとも動かず見ていられる程面白い壁では無い筈だ。
文字通り壁。
彼女が見ているのはただの壁。
(なんかちょっと怖いんですけど......)
美人であるが故に無表情で突っ立っていられるとマネキン感がハンパ無い。
いやもうマネキンそのものだと言っても過言でない。
もしこの世にマネキン大会というものが存在するならばぶっちぎりで優勝だろう。
これだけのクオリティーを誇るマネキンならば言い値で買い取ってもいい位だ。
(——って!そんな事はどうでもいいんだよっ!)
どうも異様な光景を目の当たりにしたせいか頭が混乱しているらしい。
俺は慌ただしく手元に置いておいた寝間着を着るとマネキンに......いや、橋坂
奈々未に駆け寄り、
「——なんで立ってんの?」
と簡潔に尋ねてみた。
彼女は俺の方を向き、ビー玉のような目で見詰めながら、
「座っていいって言われなかった......から?」
聞こえるか聞こえないか位の小さな声でそう言った。
彼女の言葉を聞いて俺の中の時間がフリーズした。
言っている意味を理解するまでに時間が掛かったからだ。
(座っていい......?言われなかった......?)
英文を訳していくかのように一文字一文字を咀嚼していく。
どうやら聞き間違いではないようだ。
彼女は俺が座っていいよと言わなかったからずっと立っていたと言うのだ。
ピクリとも動かず、壁を凝視しながら俺を待っていたのだ。
忠犬ハチ公を超える義理堅さだ。
やがて時間を掛けて動き出した脳みそから捻り出した言葉は、
「あ〜......えっと.........それは、うん...........ごめん」
謝罪の言葉だった。
つまり俺が悪いという結論に達したのだ。
(確かに座っていいよとか、ゆっくりしてとか言ってないケド......)
とはいえ、とはいえだ。
言われなかったからといって俺が風呂から上がるまでずっと突っ立ってる義理はないだろう。
よしんば性格的にそれが許せなかったとしてもとりあえず適当に腰を下ろして、「ごめん、座っちゃった」とか後からいくらでも言えるじゃないか。
そもそもこんな安アパートの部屋に座ってはいけない場所なんぞない。
風呂場で余計な事をしていたせいで時間もそこそこ経っている。
その間、彼女はずっとここに立っていたのだ。
(ん〜......こういうのは礼儀正しいって言うのかっ!?)
確かに彼女からは良いトコのお嬢様な雰囲気は漂ってはいるが、礼儀正しいも度を越している気がする......
性格的に流されやすいというものではなく、自分の意志すら無いような印象を受ける。
「それじゃ、えっと......どうぞお座り下さい」
いつまでも立たせておくのも悪いと思い、一番座り心地がマシであろう近くのベッドにボーイよろしく手の平を裏返して案内する。
俺の案内に従って主人に「おすわり」と言われて座る犬のように彼女はベッドの端にちょこんと腰掛けた。
その座る仕草が妙に可愛いらしく、実家で飼っていたトイプードルを俺は思い出していた。
そんな彼女の一挙手一投足を眺めていると、ふとある事に気付く。
(——っ!?)
マネキン状態に意識を根こそぎ持っていかれて気付かなかったが、彼女は身体にバスタオルを巻き付けたあられもない姿のままだったのだ。
俺は思わずゴクリと生唾を飲んだ。
最初にシャワーから出てきた時もそうだったが、無防備にも程がある。
自分が女の子であるという意識はないのだろうか?
そんな雄の性欲を刺激するような格好をいつまでもしている事がどれだけ危険な事か分かっていないのだろうか?
それとも俺の事をそもそも雄として認識していないとでもいうのだろうか?
「あのさぁ......」
一瞬、説教臭い言葉が喉元まで出かける。
しかし、俺は寸での所でそれを堪えた。
「......えと、寒くない?......寝間着とか持ってないの?」
彼女は何故そんな事を聞くのか意味が分からないといった顔で首を横に振った。
「あっ、そう.....」
着替えというものをそもそも持っていないらしかった。
女の子は荷物が多いものだという俺の中の常識がまたしても覆された瞬間だった。
着るものが制服オンリーとかワイルド過ぎる。
どこの番長かとツッコミたくなる。
(そういえば初めて会った時も学校指定の鞄以外持っていなかったような......)
その鞄も物が詰まっていたという印象はなく、スカスカだった気がする。
なんだか目眩がしてクシャリと頭を抱えた。
どうやら俺はとても変な子を家に泊めようとしているのかもしれない。
(だが、待てよ......)
これは考え方によってはチャンスだと言えた。
なにしろ俺の指示があるまでその場をピクリとも動かなかった程の忠犬ハチ公女だ。
自意識も危機意識も薄そうなこの子なら、ちょっと強引にいけばヤラせてくれるかもしれない。
いや、きっとそうだ。
それこそ手順とかそんなまどろっこしい事を考える事なく。
一度射精して賢者モードに入っていた俺のスイッチが一瞬にして切り替わり、狼モードへと変わっていく。
そう、これはチャンス。
モテ期がついぞ訪れなかった非リア充街道を突き進む俺に訪れた千載一遇のチャンス。
彼女の方を振り返り、もう一度上から下まで眺め見る。
相変わらず何を考えているか分からない無表情だが、タオル越しの女らしい肉付きをしたその身体からは申し分ない色気が漂っていた。
頭の中でブチンと何かが切れる音がした。
これ以上、込み上がってくる衝動を抑える事が出来ない。
俺は大人しく座っている彼女に近付くと、何も言わず細い両肩を掴んでベッドに押し倒した。
応援よろしくお願いします。
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