「ウブな
麻衣様には少し刺激が強過ぎましたか」
そんな
藤堂の言葉は耳に入っていないようだった。
自室へ戻された
麻衣はベッドに腰掛け、両手で体を抱いて小刻みに震えていた。
ここに連れて来られた時点である程度の覚悟はしていたとは思うが、想像絶する光景に少女は思考停止に陥っていた。
怯える
麻衣を観察していた
藤堂は、
「今日から調教を開始しようと思っていたんですが......困りましたね」
と溜め息を漏らした。
気分屋の鷲男には困ったものだ......
調教を任せると言っておきながら気分次第でちょっかいを出してくる。
それに対して
藤堂は何も口を挟めない。
雇い主と使用人という上下関係がハッキリしているからだ。
鷲男がちょっかいを出す度に軌道修正を余儀なくされる。
(まぁ...いつもの事ではあるが......)
ここに来た直後の少女達は多かれ少なかれこういう状態になりやすい。
これまで何人もの少女を調教してきた
藤堂の経験からだが、
麻衣は普通の女の子よりもメンタルが一際弱いようだった。
危うさと綱渡りの儚さ。
そこから生まれる女性特有のしなやかさと可憐さを併せ持つ初々しい花。
ある者は守りたいと考え、ある者は手折りたいと考えるだろう。
それは彼女の魅力でもあったが、
あまり強引に事を進めると容易にへし折れてしまう。
薄く細いものは美しくもあるが同時に折れやすくもある。
摘み取る悦びや達成感もあるにはあるだろうが、それは鷲男の趣味趣向にそぐわず、
藤堂の本意でもない。
鷲男は品無く壊れたコレクションは容赦無くあっさりと切り捨てる。
壊れた玩具の末路は悲惨だ。
安値で海外に売り飛ばされ、散々体を弄ばれた挙げ句、売春街にでも捨てられるだろう。
それでもまだいい方だ。
最悪の場合、体を分解され...
藤堂はそこまで想像を巡らせ、その思考を振り払うように軽く頭を振った。
(非建設的だな)
これまで
藤堂が担当した少女は少なくとも心を壊した子はいない。
(今回も必ず上手くやってみせる...)
これは別に
麻衣に入れ込んでいる訳ではなく、同情している訳でもない。
単純に自分の美学に反する。
ただそれだけだった。
その美学はかつて
藤堂が崇拝し教えを乞うた師匠の挟持そのものでもあった。
師匠自身、過去に調教失敗し、心を壊した少女から手痛いしっぺ返しを食らったと話していた。
精神が崩壊した人間は自分の制御から完全に外れる。
それは支配する側からすれば失敗であり自分の無能を露呈する事だと。
それ以来、師匠は、
『自我を保たせつつ屈服させる事こそが美しい』と考える様になったらしい。
その考えには
藤堂も賛成だった。
「仕方ない...」
藤堂はフゥと溜め息を一つ吐くと、
麻衣に近付いた。
麻衣の隣に腰を下ろすと、
「
麻衣様......」
驚かせないように優しく声を掛ける。
それでもビクリと体を震わせ、
藤堂の方を振り返った
麻衣の目にはありありと怯えの色が浮かんでいた。
「
麻衣様に女性の喜びを教えて差し上げます」
出来るなら精神的ショックのある当日でなく日を改めたい所だったが、あまり時間を掛けてもいられない。
鷲男は慎重にとは言っていたが、それはのんびりやっていいという事ではない。
下手したら明日にでも「
麻衣の処女を奪わせろ」と言い出すかもしれないのだ。
調教を任せた直後にまさかそれは無いと思うが、気分屋の鷲男がいつそれを言い出すのかは分からない。
それまでにある程度、性に対する許容範囲を広げておかなくてはならなかった。
(性的に欠陥を抱える私でも
麻衣様に女の喜びを教える事くらいは出来る)
藤堂はそう独りごちると、
麻衣のほっそりとした腰に手をそっと回した。
シルク製の純白のドレスの心地良い手触り。
麻衣は体に触れた瞬間、ビクッと震え離れるそぶりを見せる。
逃げても無駄だと分かっている麻衣はあからさまに逃げようとはしなかったが、心に壁を作り、男という生き物が信じられないといった状態だ。
会話によって心を解す事は出来るが、それでは時間が掛かり過ぎる。
(少し強引にいくか...)
「
麻衣様、失礼します...」
藤堂は麻衣をビックリさせないよう声を掛け、静かにその手を
麻衣の肩に回した。
そしてゆっくりとベッドに傾けていく。
その時、腰に回した右手を
麻衣の後頭部に添える事も忘れない。
壊れ物でも扱うように優しく、丁寧に
麻衣に触れていく。
「
麻衣様、私に全てお任せ下さい」
そう耳元で囁いた。
麻衣は返事をする事もなく頷く事もせず、ただ子供のようにそっぽを向いた。
そんな
麻衣の様子を気にする事なく、
藤堂は
麻衣の首筋に顔を寄せる。
鼻で首筋を愛撫するようにサラリと撫でる。
藤堂の柔らかくクセのある髪が、
麻衣の顎先をかすめた。
そのまま流れるように鎖骨に口付けすると、あくまでもソフトに舌で舐め上げる。
突然の刺激に
麻衣は「....ぁっ!」と小さく声を漏らすが、
顔はまだそっぽを向けたままだった。
本来であればリラックス状態にまで導いてから愛撫にいきたい所だったが、それは同時こなしていく事にする。
「
麻衣様は白く、そして美しい......透明な硝子細工のように綺麗で魅力的です......」
耳元でそう囁きながら、
麻衣の敏感に感じる場所を手探りで探していく。
女性は脳で快感を感じる生き物。
それは全身が性感帯だという事でもある。
それでも個々で感じやすい場所やポイントは異なるものだ。
髪を五指で優しくとかしながら頭を撫でていく。
頬を撫で、耳へと滑らせる。
「......んんッ.....あぁ....」
麻衣の反応を見ながら
藤堂はたっぷりと時間を掛け性感帯を探していく。
性感帯を探す作業はそのまま愛撫の役割も兼ねる。
更に
藤堂は、
「乱暴な事は致しません。御安心下さい」
直接的な性的言語を避け、麻衣の心を解きほぐしていく。
女性は男性のように性欲がいきなりトップギアに入る事は少ない。
ゆっくりと弱火で沸騰するまで待つのが好ましい。
特に性体験の少ない女性程。
リラックスしてくれない事には探し物も見付からないのだ。
「長く伸びた美しい髪も、甘い果実のような瑞々しい柔肌も、これまで私が見てきた女性の中でも
麻衣様は特別です......」
そう口にしながらも
藤堂は
麻衣の反応、その一つ一つを決して見逃すまいと全神経を研ぎ澄ましていた。
麻衣は指先が耳の傍を通る時にだけ、他の場所よりも僅かに良い反応を見せるようだった。
試しに
藤堂はその耳をカプリと甘噛みしてみた。
その瞬間、
「.....ひゃう!?」と
麻衣が声を漏らした。
その反応に間違いないとの確信を持った
藤堂は、ざらついた舌で耳の周り、耳輪を舐めていく。
「んッ......んッ......んんッ....」
顔を背け、手の甲を口に当てて声を我慢するような
麻衣の様子。
それは『そこが感じます』と言っているようなものだった。
そこから
藤堂は耳のクリトリスとも呼ばれる耳の付け根、耳珠へと舌を伸ばす。
チロチロと舌を動かし、陰核にするように刺激してみるが
ここは思った程の反応を得る事が出来なかった。
快感よりもむしろ、
(まだくすぐったさの方が強いか...)
そう感じた
藤堂は耳への愛撫を一旦止める。
性感を上げる為に絶対的に足りないものがる...
(やはり...)
そう考えた
藤堂は
麻衣の顎をそっと左手で掴むと自分の方を振り向かせる。
あくまで無理なく、慌てずに...だ。
麻衣はそれに逆らう素振りは見せなかった。
その頬は僅かに紅潮し、瞳には潤いがある。
リラックスし始めている証拠でもあった。
藤堂は目を細め柔らかく微笑むと、自分は害を及ぼす者ではないと瞳で語りかける。
しばらく
麻衣と見詰め合った
藤堂はゆっくり顔を近付け、
その唇と唇を重ねた。
応援されると興奮、いや喜びます。
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